和楽器を使った日本の音楽の指導について

ー準備・研修・実践等ー

《 はじめに 》

 ここ3年近くの間に日本の音楽の指導法にかかわる実技講習や講演会等で全国各地の音楽担等の先生方に出会う機会が数多くあり、これは昨年度から実施されるようになった中学校音学科の学習指導要領の器楽指導の中で、3年間を通じて一種類以上の和楽器を用いることが示されたこと、自国の伝統文化を尊重する心を育てる具体的な活動が各地で実践されるようになってきたこと等が大きな理由だと思いますが、各学校には厳しい経済状況の中で和楽器の購入もままならない現実があり、各地で実践可能な具体策を検討しおながら、和楽器の実技実技研修や指導法が研究がされていますが。実際には文部科学省の調査が発表されたように、この分野の授業が軌道に乗っている学校は少なく、多くの課題が残っているように思われます。
 ここでは上記を踏まえ,私の過去にやってきたこの分野の実践に最近の拙い研修で得たものを加えて、授業等での具体的な活用法を紹介しておきます。最近の各地の講習会等は小・中学校の先生が一緒になって実施されることが多く、小学校での和楽器の導入も急速に広まっていますので、小学校での状況についても紹介します。

《 篠笛の指導 について》

  篠笛はすぐ音が出るというわけにはいきませんが、計画的に望ましい指導を積み重ねていけば、日本的な味わいを持った素晴らしい演奏を楽しむことができますし、リコーダーのようなABS樹脂で作成された音程の安定したものも販売されていますので、何より僅なかな経費で児童・生徒に和楽器を体験させられるというメリットがありますが、導入指導では授業の中の10分程度の扱いで、まず音が出せ、少しずつ音域を広めながら粘り強く見届けていき、約3ヶ月くらいを経過した頃より、やさしいメロディーが吹けるようになってきますので、この頃から太鼓や他の和楽器とのアンサンブルが可能になってきます。     小学校4年以上であればどの学年でも可能だと思いますが、指導者にいく分かの心得がないと音が出るようになるのに時間がかかりますので、事前に先生自身がこの笛の音が出せるようにしておくこと、特にこの笛の基本的な奏法(伝統的な奏法の基本)をマスターしておくことが欠かせません。

 篠笛の値段はABS樹脂のものでは1600円前後ですが、篠竹の本格的なものだと2万円前後の値段がついています。又、篠笛には音の高さによって低いものは2本調子から色々な種類がありますが、7本調子を使うのが一般的だと思います。(8本調子は西洋音階のハ長調の高さとほぼ同じ高さになる。) そこで、授業等で使用するにはこの調子の篠笛を選べば間違いと思います。しかし、リコーダーを購入した上に更に篠笛を個人持ちにすることは困難という実情もあると思いますが、このような時には水道工事に使う内径13mmのA BS樹脂の水道管を購入し、7本調子の篠笛の吹き口や指穴の位置(例えば中学校の技術科のドリルを借りて購入した篠笛とほぼ近い状態)に穴を開け、更に棒ヤスリやサンドペーパー等で修正し、仕上げに吹き口の左の少し奥の位置まで木の丸い栓を入れる方法(実物を見ればどの辺りまで栓が入っているか分かります)で、自分たちでこの笛を作って指導する方法もあります。
 この方法で私自身も何年か小、中学校で指導してきた経験がありますし、ほかにもこの方法ですぐれた指導をしてこられた先生がおられますので、この方法でも大きな効果があることは確かです。

 この篠笛の奏法を勉強するのに簡単に指導者がみつからない場合には、まず、全音楽譜出版社から出ている「やさしく学べる篠笛教本」を使うのが効果的だと思いますが、実際の音や奏法を見ながら勉強をしたい方は、この教本に関連したVIdeoTape「 鯉沼廣行-しの笛の吹き方」(伝承企画 貫 TEL045-811-7496)を参照されるのも効果的だと思います。         

箏の導入とアンサンブル

 各地の講習等で要望の多かったものは、この楽器(箏)の導入とやさしいアンサンブルですが、現状ではひとクラス分の箏が使える学校は殆どないといっても差し支えない状況であり、年に10面程度購入できる学校は恵まれた方で、全く見通しの立たないところも多いように見受けられます。そこで苦肉の策として校下(区)に校長名や教育長名で、使っていない琴があったらお貸しいただくように依頼文を出して借りた学校もあり、この時にこれから使う見通しがない家庭からは寄付していただいた例もいくつか聞いています。又、レンタル料を支払って使用期間のみ借用する方法。教育委員会でまとめて何台かを購入して、管轄内の学校を指導期間を区切って回す方法等様々な工夫をして、全国各地で箏を使った授業が動きはじめています。この中で本琴(普通の13弦の琴)を2、3面と後は値段の安い分数琴(文化箏、ネオ琴等)を何面か購入し、少しでも多くの児童・生徒に体験させるようにした学校も増えてきています。

 ここでの指導は少ない指導時間の中で、平調子の上行、下行の音階を確認してから、早速「さくら」等のさぐり弾きを体験させる。これにリコーダーの等の助奏をつけて全員のアンサンブルを体験させるといった指導がはじまっているようですが、教育芸術の中学校器楽教科書の中の43Pの「さくら」の「前奏」、「後奏」の箏独特の伝統的な奏法まではなかなか扱い切れない状況にあるようです。
 ここで問題になるのは日本の伝統楽器である箏と西洋音楽の体質を持ったリコーダーとのアンサンブルについては、本来は尺八や篠笛とのアンサンブルが望ましい姿ですが、激減した授業時間数の中でのほんの僅かな時間内で扱うには、リコーダーを扱わざるを得ない実情もありますし、指導要領では学校や児童・生徒の実情に即して扱ってもよいことになっています。実際にやってみるとリコーダーは西洋楽器の中にあっては琴と最もよく合う楽器だと思います。最近になって小学校でも琴とリコーダーのアンサンブルをやられるところが増えています。

 尚、小学校における箏とソプラノリコーダーとのアンサンブル曲は「導入期におけるリコーダーの指導法」(全音楽譜出版社)、中学校向けの箏とアルト・リコーダーのアンサンブルは「クラス授業のための和楽器を使ったアンサンブル」(全音楽譜出版社)の中に何曲授業用の曲が入っています。

和太鼓のアンサンブル

 和太鼓の指導に関しては日本の音楽の体質や感性を大切にし、ごく自然に児童・生徒に奏法を伝え発展させていくような指導法をとるべきだという考え方が広まってきて、西洋音符に記録してこの感覚のリズムを体験させるのではなく、今では唱歌(しょうが:どん どこ どん カカ等)による伝統的なリズムのニュアンスを伝え発展させていく方法が望ましい指導法であり、西洋音符による記符はあくまで参考資料にすぎず、この楽譜を使う場合には唱歌(しょうが)による打法を記入して使うことが一般的になっています。
 和太鼓のアンサンブルの形態や太鼓の奏法はそれぞれの地域によって異なりますが、大切なことは、まず日本の伝統的な和太鼓のリズムと奏法を唱歌(しょいが)を伴って理解し、例えば基本リズム(裏打ちルズム)に乗って表打ちのリズムがどのように重なっているか、即興的なリズムはどの部分で現れるか等、アンサンブルの構造を把握しながら、それぞれの地域に伝わる太鼓の演奏を取材し、配当時間内で扱える教材にまとめることが欠かせないと思います。
 又、和太鼓のアンサンブルではメロディーに篠笛が加わることが一般的ですが、前述の方法で篠笛の音が出せるように意図的・計画的に指導を積み重ねていけば、篠笛と和太鼓とのアンサンブルは十分可能ですし、地域の祭り等のお囃子等で篠笛を吹いた経験のある児童・生徒がいれば、それを活用すれば味わ深い太鼓のアンサンブルが実現できるわらです。
 太鼓はローテーションを組んで交代させながら演奏させることができ、自分が太鼓を打っていない時には撥で裏打ちリズム弱く打ってアンサンブルの流れに繋がっていく方法がありますし、太い青竹を横向きにして両側(3脚にするのが簡単)を支え、この竹を大勢の児童・生徒で叩くとか、撥にビニールテープを巻いてボリュームを押さえる工夫等をすれば強弱や音色の変化も可能になります。尚、撥は木工場等で相応しい材料を選んで丸(●)材にしてもらえば安価に作成できます。又、地域によっては祭りに使わない時期には太鼓を学校に貸していただけるところもあると思います。様々工夫と努力をしている内に学校予算で太鼓を購入していただけるようになってくると思います。まずできることから努力していくことが大切だと思います。

尚、和太鼓を使ったアンサンブルは小学校1年生から扱うことができますが、篠笛と和太鼓とのアンサンブルとなると小学校4年生以上だと無理なく扱えると思います。

和太鼓を使った民俗芸能を指導することの教育的な意義については
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